海外でカードが使えない ― キャッシング枠を切っていた私の失敗
🧭 これは 2024年5月 の台湾を旅した記録です。同じ旅の記事を見る →
海外旅行で、現金がなくなったらどうしよう。カードを盗まれたらどうしよう。ATMでキャッシングできなかったらどうしよう。そんなことを、考えたことはあるだろうか。
30年ほど前なら、多くの人がトラベラーズチェックを持って出かけていた。落としても再発行してもらえる。そういう保険が、旅の常識としてちゃんとあった。
今はどうなんだろう。カード1枚あれば世界中どこでも、という時代になった。その代わりに「使えなかったとき」の備えは、どれくらいの人の頭に残っているだろうか。
私は渡航歴が多いぶん、正直、慣れが出ていた。お金がなくてもなんとかなるでしょ。最悪、現地の人の家に泊めてもらえばいいし、ごはんだってなんとかなる。実際、これまではずっとなんとかなってきた。
でも、今の私には小さな子どもが2人いる。「なんとかなるでしょ」で押し切れる相手ではない。
そして今回、まさにその事件が起きた。
台湾に着いたら、とんでもない大雨だった

空港の外に出た瞬間、道路が白くけぶって見えるくらいの降り方。信号待ちのタクシーの屋根で、水しぶきが跳ね返っている。普通なら「ついてないな」と思う場面だと思う。でも私はむしろ、テンションが上がっていた。
ここまで降ると、逆に面白い。旅が始まった、という感じがする。
あとから思えば、この日の雨はこの先を少しだけ予告していた。もちろん、雨とクレジットカードにはなんの関係もない。ただ、このあと私は2日近くを、ほとんど屋根の下で電話をして過ごすことになる。
空港のATMで、カードが1枚も使えなかった
台北の空港に着いて、SIMカードを契約して、次はお金だ、とATMを探した。
MRTの駅にあるATMの前で、財布からカードを1枚ずつ抜いては差し込んだ。全部だめだった。1枚も現金が下ろせない。
そのときはまだ「このATMが安いやつだからかな」くらいに思っていて、もっとメジャーな台湾の銀行に行けばいけるだろうと考えていた。でも、そういう問題ではなかった。
原因は、はっきりしていた。私が自分でそうしていたからだ。
キャッシング枠を「あえて」ゼロにしている
私は、持っているクレジットカードのキャッシング枠を全部ゼロにしている。意図的に、である。
理由は、これまでの旅でいろいろなトラブルを経験してきたから。そのうえで出した結論が「キャッシング機能は無いほうがいい」だった。
いちばん怖いのはスキミングだ。カード情報を抜かれたとき、キャッシング枠があると現金まで引き出されてしまう。ショッピング枠だけなら、不正利用の補償で戻ってくる可能性が高いし、そもそも被害の入口が1つ減る。
この判断そのものは、今でも間違っていなかったと思っている。
ただし、保険の1枚は持っていた
とはいえ、海外で現金が全く作れないのは危ない。だから1枚だけ、キャッシングができるカードを別に持っていた。
普段は使わない。財布の奥に入れっぱなしで、旅のときだけ「これがあるから大丈夫」と確認するためのカードだ。
今回、それを家に置いてきてしまった。
荷物を軽くしようとして、いちばん大事な1枚が抜けた
今までの旅とは、まったく条件が違った。
子どもが2人いる。サクと、まだ0歳のハル。おむつ、ミルク、着替え、抱っこ紐。それだけで荷物はいっぱいになる。
だから今回は、とにかく軽量化を目指した。持っていくものを1つずつ「これは本当に要るか」と見直して、削れるものは全部削った。
財布の中身も、その対象だった。使わないカード、使わないポイントカード、要らないレシート。全部抜いた。
そのときに、保険の1枚も一緒に抜けてしまったのだと思う。
普段使わないカードだったから、抜いたことにすら気づかなかった。皮肉なことに、「普段使わない」という理由で入れっぱなしにしていたカードが、「普段使わない」という理由で捨てられたわけだ。
本当にきつかったのは、カード会社に連絡できないこと
現金が下ろせないこと自体より、この先のほうが消耗した。
台中駅に着いてから、カード会社に問い合わせようとした。ここで壁が3つあった。
- Skypeが使えない:ログイン情報がわからず、そもそも入れなかった
- LINEでは解決しない:こういう手続きはチャットでは受け付けてもらえない
- 台湾の電話番号から日本にかけられない:現地SIMの番号では、日本のカード会社の窓口につながらない
最終的に、妻のスマホに入っていたViberでようやく連絡がついた。しかもそのViberは、1週間で解約しないといけない種類のものだった。
海外にいる自分が、日本のカード会社に電話をかける手段を1つも持っていなかった。これが今回いちばんの反省点だ。
「29日が最短です」
翌日、雨のホテルで、日本のカード会社に事情を説明した。
たらい回しにされた挙句、返ってきたのは「対応できるのは29日が最短」という答えだった。旅の折り返しを過ぎている。話にならなかった。
台北側の窓口からも日本に問い合わせてもらったが、結果は同じだった。
半日、ホテルで電話とにらめっこして終わった。その日、私は音声メモにこう残している。
「今はなんか脳のリソースを使いすぎたので、今日は何をするか考え中です」
雨だったのが、せめてもの救いだった。晴れていたら、もっと悔しかったと思う。
結局、どうやって旅を続けたか
答えはシンプルで、両替だった。
3日目、鹿港(ルーガン)の両替所で現金を作った。コミッションは取られたけれど、これで旅は続けられた。
それまでの2日間は、手持ちの現金と、カードが使える店を選ぶことでしのいだ。初日の夜、もともと行こうと思っていた店がカード不可で、20分歩いて春水堂に変更したのもこの流れだ。空腹のサクが怒っていた。
結果として、旅そのものは十分に楽しめた。でも「本来なくてよかった消耗」に、初日の午後と2日目の午前を丸ごと使ってしまった。子連れの旅で、この半日は大きい。
同じ失敗をしないための6つ
私と同じようにキャッシング枠を切っている人、これから切ろうと思っている人に向けて、今回学んだことを書いておく。
- キャッシング枠ゼロの方針は変えない。スキミング対策として、これは正しいと今でも思う
- ただし「保険の1枚」は絶対に持つ。普段使わないカードこそ、旅の荷造りで真っ先に確認する
- 荷物を減らすとき、財布の中身は最後に触る。軽量化の勢いで抜いてはいけないものがある
- 出発前に、1枚ずつ声に出して確認する。「これはキャッシングできる/できない」と口に出すと、思い込みに気づける
- カード会社の海外サポート窓口の番号を、紙で持つ。スマホが壊れたら、番号すら調べられない
- 国際電話の手段を1つ、ログインできる状態で用意する。Skypeでも何でもいいが、「入れること」まで出発前に確かめる
もう1つ付け加えるなら、到着日に使う分の現地通貨は日本で両替しておくこと。空港のATMで詰んだとき、手元に現金があるかどうかで焦りがまったく違う。
それでも、いい旅だった
この旅は、私たちにとって初めての「子ども2人での海外」だった。
台中駅の前で、サクが年下の女の子に追いかけられて大泣きした。ハルは旅の途中で初めてのうんちをした。ホテルの部屋番号を2人で当てっこして、「お疲れ様」と言い合って一日を終えた。
カードのトラブルは、記録を読み返すと確かにしんどい。でもそれ以上に、細かい出来事のほうが残っている。
そして、この台湾がその後の「6大陸大冒険」につながっていく。序章としては、なかなか手痛い授業料だった。